2025年7月11日に発表された、株式会社QPS研究所(以下、QPS)の2025年5月期決算短信をもとに、最新の業績動向や財務状況、今後の見通しを解説します。宇宙産業の注目銘柄である同社の成長戦略とリスクを読み解きます。
1. 業績概要:売上は前年同期比62%増、しかし減損で赤字拡大
| 項目 | 2025年5月期 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 26.8億円 | +62.1% |
| 営業利益 | 0.85億円 | ▲75.0% |
| 経常利益 | ▲2.1億円 | 赤字転落 |
| 当期純利益 | ▲18.48億円 | 赤字幅拡大 |
売上高は、小型SAR衛星の打上げ成功と地球観測データの提供によって大幅増となりました。しかし、通信系の不具合によりQPS-SAR5号機で約16.36億円の減損損失を計上。これが響き、最終損益は18.48億円の赤字となりました。
2. 財務状況:資産増大、現金も大幅増
| 指標 | 2025年5月期 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 総資産 | 239.2億円 | +87% |
| 自己資本比率 | 62.2% | ▲3.6pt |
| 現金及び現金同等物 | 118.3億円 | +96.5% |
財務面では、衛星製造と研究開発拠点の設備投資により、固定資産が大幅に増加。加えて、シンジケートローンや新株発行による資金調達(約80億円)により現金残高も急増しています。
3. 衛星開発の進展と今後の見通し
2024年以降、以下の衛星を打ち上げ、事業展開を加速させています。
- QPS-SAR7号機「ツクヨミ-Ⅱ」:定常運用中
- QPS-SAR8号機「アマテル-Ⅳ」:初画像取得済み
- QPS-SAR9号機「スサノオ-Ⅰ」
- QPS-SAR10号機「ワダツミ-Ⅰ」
さらに、2026年5月までに5機の打上げを予定しており、コンステレーションの完成に向けた体制構築が着実に進んでいます。
4. 2026年5月期の業績予想
| 指標 | 2026年5月期(予想) |
|---|---|
| 売上高 | 40.0億円 |
| 営業利益 | ▲22.0億円(営業損) |
| 経常利益 | 6.0億円 |
| 当期純利益 | 5.0億円 |
| 為替前提 | 1ドル=150円 |
営業赤字を予想する一方で、経常・最終利益は黒字化を目指しています。これは補助金収入や金融収支の改善を背景としているとみられます。
5. 継続企業の前提に関する注記
1年で約18億円の赤字を計上したことにより、監査上の「継続企業の前提に関する重要事象等」が発生。しかし、以下の資金調達実績により継続性に懸念はないと判断されています。
- シンジケートローン(SMBC主幹):50億円借入実行
- 新株予約権の発行:80.2億円の資金調達
また、宇宙戦略基金の交付決定も資金的な後ろ盾として機能しています。
6. 2025年12月に持株会社「QPSホールディングス」設立へ
QPS研究所は、2025年12月1日付で「QPSホールディングス」を設立し、持株会社体制へと移行予定です。
- 現在の株式は2025年11月27日に上場廃止
- 新持株会社は同年12月1日にグロース市場にテクニカル上場
この移行により、意思決定の迅速化や外資規制への対応、グループ経営強化が期待されます。
まとめ:成長軌道と資金確保のバランスがカギ
QPS研究所は、SAR衛星による観測データビジネスを軸に、急成長中の宇宙産業市場で存在感を高めています。一方で、事業モデルの特性上、先行投資と減損リスクが避けられず、財務的な安定性と収益化のバランスが引き続き重要です。
投資家視点では、今後の黒字転換とホールディングス体制下での事業拡大が注目ポイントとなるでしょう。

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